10. 写真集「赤い花」の話





 21才の女の子が一枚一枚着ているものを脱ぎ捨て、やがて一糸まとわぬかたちとなる。それも、真赤なスポットライトを浴びて。 見つめれば見つめるほど、僕の中にある現実と夢の境界線がどんどん無くなってくる。その不確かな瞬間を定着させたかった。 ストリッパー「荒井まどか」はいわゆる普通の女の子である。かといって、今時の女の子とは少し違う。ある部分は非常に日本的な女性である。 そんな彼女が人前で股を拡げて舞台の上で舞う。それだけで驚きである。 何か悪い夢でも見ているような気になる。 しかしそれは現実である。 僕の眼の前で繰り広げられる彼女の裸体は、想像以上に艶かしく、エロティックである。本当に彼女なのか。
一体、彼女の何が、このような世界を現実のものとするのか。僕の頭の中はどんどんスポットライトの光で赤く染まっていった。 その現実の中で僕はシャッターを切ってはみた。 しかし立ち現れた映像はやはり夢そのものであるような気がする。 それでも僕は繰り返し、彼女の裸体を見つめ続けた。やがてその裸体がどんどん別のものに見えてきた。 時には海のように、 時には樹木のように、 そして性器はまさしく花のように。 改めて女性の肉体の中には宇宙の全てが含まれているのかもしれないと感じた。 それはとても浅い夢に似ている。
夢とうつつを繰り返し、そんな意識の中で存在するもの、それは赤い世界。生命みたいなことなのか。それとも単なる色彩なのかははっきりしない。それさえも夢のようである。 花ひとつとってみても、世界の中には生花と造花がある。全く別のもので、どっちがいいとか悪いとかはここでは問題ではない。 両方とも不思議な存在であることに変わりはない。 それが美しいのか、それともただの幻想なのか。 多くの人は眼に見えるものを信じ、眼には見えない感覚を疑う。 しかし僕はいつでも感じることを信じたい。 出来ればそれを何とかかたちにしようと毎日想っている。




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