12.滝の話





 ノルウェイというと最近では村上春樹氏の影響か、ほとんどの人はあのビートルズの名曲「ノルウェイの森」を連想するだろう。確かにトロルという妖精というか妖怪の住む、針葉樹を中心とした深い緑の森があり、その森と森の間を大きなフィヨルドが流れている。そして多くの森の上に氷河が未だに残っている。  氷河の話はまた別の機会にするとして、僕の眼に最初に止まったのは、ノルウェイの森の中に存在する大きな滝である。それらの滝は山道を車で上がって行くと、突然現れる。50メートル以上あると思われるその大きさと音と水しぶきに圧倒され、しばらく車を降りることは出来なかった程である。僕はその間、じっとその滝を凝視していた。そしてあることに気が付いた。当然のことながら滝の水は重力に従い上から下に落ちる。しかし、その途中で空気とぶつかり合い、空気に押し上げられるかたちで水蒸気となる。
だから我々の眼には、透明であるはずの水が、粒子となり白く見えるのだろう。そのある一部分だけを見ていると、動きは明らかに下から上へ向かって見える。不思議だが事実である。
やがて、ゆっくりと落ちてはくるのだが、僕には無機的であるはずの水が、生命を持って動いているように見えた。雪解け水がやがて大きな滝となり、フィヨルドに流れる。そしてそれはまた雨となり、雪となり地上に降り注がれる。
 ノルウェイに数多く存在する滝の中に「スタイルハイムの滝」という名前の滝がある。この滝はノルウェイの有名な詩人が自殺したことで有名な滝である。きっとこの詩人も滝を毎日見つめている間にこの水が永遠に繰り返されることに思いを馳せて身を投げたのかもしれない。


 


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