2000/03/02「明るい場所」監督・豊島圭介



先程、豊島君のデビュー作、映画「明るい場所」のプリントを、京橋にある「映画美学校」というところで初めて観た。
豊島君というのは、今は我がストロベリーピクチャーズのメンバーでもあり、バンザイペイントの立沢さんとURNの浦野さんと共に「GENKOTU」のメンバーでもある。彼の詳しい略歴はもうすぐ完成するであろうstrawberrysのホームページでも紹介されると思うので、興味にある人は参考にして欲しい。
簡単にいうと、若くて才能のある映画監督であり、僕の大事な仲間でもある。

僕は出身校でもある大阪芸術大学で、違う学科(映像計画学科?)ではあったが日本を代表する名カメラマン宮川一夫氏の授業をこっそり受けていた。知らない人に簡単に説明すると、「溝口健二」組のカメラマンであり、黒沢映画「羅生門」に於いてもあの伝説的なカメラワークを展開した人である。
そのおかげで、僕はそのころの日本映画にリアルタイムではないが、大いなる憧憬を持っている。そして今でも僕にとっては、どんな外国映画よりも映像的には、魅力的で、未だ学ぶことが多いと感じている。とにかく僕にとって「宮川一夫」は写真、映画に関わらず、世界最高の映像作家だと思っている。先日あの荒木経惟氏をはじめ、多くの写真家が宮川氏を敬愛しているという話を聞いた。
というのも僕は昨年、ひょんなことから「SOTOKOTO」のヨー・ヨー・マ(チェリスト)の撮影で、奈良に行っているときに宮川一夫氏のご長男一郎氏に出会った。そして今では一緒に仕事をして、おかげでいろんな話を聞かせてもらっている。

次の豊島映画を一緒にやるということで、僕の中にある映画熱が久しぶりに今、盛り上がっている。そして何だか不思議なことにいろんなことがリンクしてきているように思う。
今僕は東京を撮っているのだが、その映像は決してホンマタカシのような軽いものではなく、かといって荒木さんのようにノスタルジックなものでもなく、何となく思っているのは、宮川先生にも何らかの影響を与えた、あるいは与え合ったであろう「成瀬巳喜男」組の名カメラマン・玉井正夫氏が創り出す、何とも言えない、しかしそこにはリアルなファンタジーが現実の中に満ち溢れているような映像を今の東京で何とかかたちにしたいと思っている。
今日観た「明るい場所」は田村さんという日本映画界の中に於いては名カメラマンといわれる人が、幸運なことにカメラを廻しているのだが、何となく玉井正夫氏が入っていて、きっと菊池さんは「明るい場所」を僕と同じように玉井さんが創り出す光景のようなものとして捉えていたのではないだろうか?

映画のことはことあるごとに話が出ると思うので、今日は写真の代わりに先程、僕が豊島君に送ったメールでも張り付けてみようかと思う。

Subject: 明るい場所
Date: Wed, 1 Mar 2000 21:13:51 +0900
From: Ichigo Sugawara
X-Mailer: ARENA Internet Mailer 1.6.2 PPC

豊島 圭介さま

今日はありがとう。
ビデオでは以前「明るい場所」を観させてもらったのですが、改めてフイルムで観て、豊島君という人間を知ってしまったからというのもあるかもしれませんが、全然違う ものに見えました。(欲目なのかね?)
たまたま僕も「明るい部屋」などという連載をやっていて(これは言語的にはロラン ・バルトのパクリですが)「明るい場所」という概念そのものは、とても気になる「場所」なのだと思います。 だから連載の中でも、いろいろ書いていますが当然、映画「青い魚」の中でもそんな場所と時間を探しました。そして朝始まって、朝終わる映画、写真集を創りました。
質こそ違うものの、僕なりにいい意味での共通点が見えて嬉しく思いました。 何の変哲もない日常の中に、ある出来事あるいは人間が介入し、小さな自分自身の変革が始まる 。そんな自分の中に何らかの感情が生まれ、そして何かが生まれる。しかし、そんなこととは全く関係ないところで、新しい朝が生まれる。その新しい朝は、当たり前のように繰り返され、それでも同じ朝は二度と無く、何かが変わっているはずであるという期待が残る。 僕はそんな映画を創りたかったわけです。
もちろんいろんな部分が稚拙ではあると思うけど、今日観た「明るい部屋」にはそれと大きくだぶる部分を感じました。 僕自身が感じたキーワードとして、「日常」「朝」「屋上」「火(ライター)」などなど、「青い魚」とは監督の力量の差、あるいは感性の差を感じて嬉しくもあり、悲しくもあったわけです。
とにかく改めて、一番最初に豊島君に感じた印象、「僕と綺麗とか、可愛いとかといった、もしかしたら少しだけ女性的な感性が似ている。」という話をしたと思うけど、その思いを新たにしました。 僕もあんな「亜希ちゃん」を可愛いと思うし、「田村さんの撮る成瀬組の玉井正夫さんばりの映像」を格好いいと思います。 とにかく「明るい場所」という映画が豊島圭介にとって、映画あるいは制作者としての原点になっているのだということがわかりました。
今日、たまたま桜庭とビリー・ジョエルの「ピアノマン」という彼のデビュー作を車の中で聞いていたのですが、「何だか若い頃のデビュー作って、荒削りだけど、ひとつひとつがいい意味でも悪い意味でも、力が入っていて、もういろんなことがやりたくて、といった気持ちが伝わってきていいね?」などと話していたのですが、次の映画 はそんな映画にしたいですね。
というより、必ずそのような良いものが出来るであろうことを確信しました。
カメラの方はお任せ下さい。どんなカメラより新しくて、尚かつ日本人の僕にしかできない映像を目指します。
取り急ぎ、ちょっとした感想でした。
ではまた明日。

ICHIGO SUGAWARA
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