2000/04/07 僕のアンコールワット
夜明けを待つ「アンコールワット」(西参道より望むAM05:50)遂に長い間憧れていたアジア最大の遺跡、そしてこれこそ世界遺産というにふさわしい「アンコールワット」が今、僕の眼の前にある。
それにしても格好いい!それはまるで地球に降り立った「人類」という宇宙人が造った要塞そのものである。
今まで様々な「アンコールワット」の写真を観てきたが、悪いけど僕の知ってる限り、この格好良さはまるで写ってないような気がする。 何とも言えない違和感を以前から覚えていたのだが、かなり前にモノクロの地味な写真集を観たことがある。モノクロが悪いというのではなくて、これだけキッチュで度派手な建物を観て、ファインアートぶったあるいはファインプリントぶった写真を撮るなんて僕から言わせると「滑稽」そのものである。
今回僕に与えられた時間は一日半、その中で何が見えるかは解らない。
ただ一つだけ解っているのは、まずは「複写」するということ。ヴェンダースが「BUENA VISTA SOCIAL CLUB」を撮ったように、まずはドキュメントから始めたいと思っている。
「格好いい」と思ったもの、「美しい」と思ったものをそのまま撮れたら成功である。このようないわゆるフォトジェニックな被写体は気を付けないと、「質感」に振り回されてしまうことが多いのである。
僕も散々それで失敗してきた。悲しいことにそれは「印画紙」は残るけど、どんどん「写真」では無くなってしまう。僕はいつの日からか「印画紙」を創ることには興味は無くなった。今はただただ、「写真」が撮りたいと思っている。ゆっくりと夜が明けていく。
太陽が昇り、静かな風と共に湿度を伴って行く。
カメラバックから取り出したレンズはすべて曇ってしまう程、その湿度は高い。
その中に射し込む光は独特の色彩を放っているように思う。
スタジオでライティングする場合、様々な光質を使うわけだが、それと同じようにいや比べられない程、多種多彩な光を太陽は地上にもたらす。
きっとここ「アンコールワット」あるいはカンボジアの光もまた独特のものなのだと思う。
朝日を浴びる「アンコールワット」の庭園
左・クメール文化の証とも言える美しいレリーフの格子 右・アンコールワット中央祠堂
アンコールワット内のデバダーそして僕たちは吸い込まれるように、中央祠堂に向かって行った。
最後頂上に行くまでの階段?たるや半端ではない。斜面の角度は75度ぐらいで、ひとつの階段の幅は10センチあるかないかである。しかもそれはすべて石である。ひとたび足を滑らせようもんなら、ただでは済みそうにない。そんな場所を年なら80ぐらいの老人が登っていくのだからすごいことである。
僕たちもさすがに少々ビビリながら重たいカメラを担いで登った。
ここ「アンコールワット」は戦時中、世界遺産に指定されるまで人々が暮らしていた。もちろん勝手に。
その匂いが今でも石に染みついている。いくつかの窓は格子が外され、明らかに下界に銃口が向けられていたものと想像できる。
確かに逃げ場所はここしかなかったのであろう。下はジャングルで覆い尽くされている。その上、先日も書いたが、カンボジアはとても平坦な土地である。
中央祠堂より望む森(遠くの山にはいくつかの違う遺跡が見えた)そして一仕事終えた僕たちは汗だくになりながら「アンコールワット」を後にした。
明日は勝谷さんのアイデアで、飛行機ではなく「プノンペン」まで「スピードボート」で行くことになったので、行くまでの途中にもう一度寄って、早朝の「アンコールワット」を少しだけ撮影することにした。
ホテルに戻り、朝食をすませて僕たちは「GRAND HOTEL D'ANGKOR」内でホテルの部屋などの撮影をした。
そしてしばし休憩の後、 次なる目的地「バイロン」に向かった。
確か時間にすると午後4時頃だったと思うが「バイロン」の側にある、「アンコールワット」南ゲートのところで車を止めて撮影をしたとき、 僕が「今ちょうど、色温度4500ケルビンぐらいじゃないの?」と勝谷さんに言った。僕は半信半疑で、早速買ったばかりの「カラーメーター」を取り出して計ってみたところ
なんと「4490K」!!
自分でいうのも何だが、経験と人間の感はすごいものだと思った。
確かに僕は今まで、様々な国の様々な場所で写真を撮ってきた。そしていろんな光を見てきた。
そして、 それはきっとこの先ももっともっと続いていくことなのだろうが、何だかそれだけで、少し幸せな気分になった。
それにしてもカンボジアの光は独特だ。お隣のベトナムともまた違う。
とにかく光がいつも遠くから射してきているような気がしてならないのである。それはきっと平坦ゆえに、とにかく空が広い、その上この湿度である。
光が風に乗って僕の目の前に届く頃には、様々なものを含んでいるに違いない。
そんな光を、僕はすごく気に入っている。
今からそれがどんな映像を生み出していくのかが楽しみだ。
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左・「バイロン」 右・巨大に成長したスポアンに押しつぶされた「タ・プローム」の遺跡「バイロン」もすごかったけど、「タ・プローム」には驚いた。
それこそ写真では観たことがあったが、そこには明らかに「精霊」が宿っているように思う。別に僕は霊感がどうのこうのなど何もないし、悪い意味で感じたわけではない。
むしろ非常に神秘的な世界だと感じた。
幸い光も日没直前の何とも言えない柔らかい光だった。僕は迷わず、ネガフイルムを選択した。
撮影が終わると、僕たちはこの暑さも手伝って異常に疲れていた。魂を吸い取られたような感じがするほど、どろどろになっていた。
明日もまた早いし、途中で食事をして帰ろうということになった。
「シェムリアップ」のフレンチレストランの内観 以外に美味しかった「カルボナーラ」その店のウェイトレスといったわけで今日も一日よく働いた。
勝谷さんとの旅は本当に楽しい。とにかくお互いに余計なことを言わないでも、どんどんスピード感を持って進んでいく。そしてそれが確実に確信に向かって行くから楽しいのである。
食事中も「日の丸、君が代」問題で盛り上がった。
嬉しいことに僕たちは共通の見解を持っていた。
ここカンボジアでは自分たちの力で 「国旗」も「国家」勝ち取ってきた。それは世界中において当たり前のことではなく、非常に困難な道のりの結果に訪れるものだったりする。
なかなか手にすることが出来ない人が今でも世界中には一杯いるはずである。そんなことも知らないで、戦争も知らないで、とやかく言うのは本当に許せないと僕は思う。
やっぱり今日も書こう。
平和が何より。
明日は遂に「プノンペン」、ボートでの旅が今から楽しみだ。
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